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The White Report 月間ウェブマガジン

The White Report 2014年 8月号  毎月20日更新

–目次–

There is a method in our madness.
〜我々の狂気には筋が通っている〜
澤田 育久
There is a method in our madness. 〜我々の狂気には筋が通っている〜
澤田 育久 (写真家)
「私は夢を見ている。蝶になった夢を見ている王の様な物語だ。」 映画”コッポラの胡蝶の夢”より

この台詞は文字通り荘周の”胡蝶の夢”を指しています。「夢の中で胡蝶としてひらひらと飛んでいた所目が覚めたが、はたして自分は蝶になった夢を見ていたのか、それとも今の自分は蝶が見ている夢なのか」という説話です。
物の変化とは表面に現れた現象面での変化に過ぎず、蝶と王が形の上においては大きな違いを持ちながら、共に己であることに変わりはない。万物は絶えざる変化を遂げるが、その実、本質においては何ら変わりのないことを述べているのです。
現実も非現実も等価でありどちらの立場にたっても本質的には変わらないように、写真に写されたものの本質が、写真として指し示された時点で露わにされた別の性質によって変化することはありません。しかし、我々にとっては写真化されたものこそが本質であり、写真にすることによる対象の異化と、その異化を対象に投影することによる本質の同化を試みることが写真作品を作ることなのだと思います。とは言え時間の経過や構成によってさえ見え方が変わってしまう写真のもつ宙ぶらりんな曖昧さや不気味さは我々が把握した本質だと思われたものをも軽々と越えて行ってしまい、なかなか本質を現してはくれないのです。