The White Report 月間ウェブマガジン
The White Report 2014年 5月号 毎月20日更新
–目次–
澤田 育久 (写真家) 「行為が結果につながり、それに依って違う世界が広がる」 映画”悪の法則”より
「行為が結果につながり、それに依って違う世界が広がる。砂漠に埋められた死体もひとつの世界。置きっぱなしの死体も別の世界。初めて知るそれらの世界も実は前から存在していた。」
リドリー・スコットの悪の法則からの言葉です。重要な事は選択なのです。我々写真家は常に選択に囚われています。しかし同時にもし写真がこのような、ある意味決定論的な領域にさえ立ち入って行くのならば、選択は無意味になり放棄されざるを得ないのです。このような意味において、全ての写真は予め存在していて我々はそれをただ機械を通して現前化しているだけなのかもしれません。
しかし決定に抗うことなく与えられた選択を執拗に繰り返すこと、無為な行為と反復だけが我々に唯一出来うる確かな選択である以上、夥しい数の写真の積み重ねによって、平行して存在するであろう現前化されることのなかった別の選択との境界は僅かながら曖昧になっていくのかもしれません。