Exhibition 展覧会情報
Room #202 #205
二人展 河田展子 + 渡邊聖子
スプラウト・キュレーション企画
2024年10月05日 〜2024年11月03日
月・火曜と第2第4日曜休み
水–土曜:13~19時
日曜:13~17時
※ 通常のWhiteの営業日・時間とは異なりますのでご注意ください。
Overview
スプラウト・キュレーションの神保町オルタナティブ・スペースThe Whiteでの企画展示第3弾は、ともに1980年生まれの女性アーティストによる2人展です。
河田展子の立体作品は、日常道ばたや自然の中で何気なく拾った質素な物のアッサンブラージュです。もちろんファウンドオブジェクトで制作すること自体は珍くはありません。河田展子の特徴は、収集した素材を、それ以上分節したり、接着しないことにあります。それらは「個」であると同時にアクタントであり、寄り添ったり、反発する力を緩和したり、重力や風などの本来の動きも取り入れながら、全体としては絶妙なバランスを形成しています。
河田はかつて、茶花の投げ入れの華道家から稽古を受けた経験があるといいます。無為の境地で一期一会の様相を作り出す、非常に緊張感を伴う花の投げ入れ。その影響か河田の作品には佇まいの美しさのみならず、空間や時間に独特の静けさや緩やかな緊張感をもたらしています。あるがままのものは矯正したり加工することなくとも、十分に美しい関係性を形成することができる。そこにはそのような社会的な含意があるのかもしれません。
写真家である渡邊聖子は、写真に留まらず詩作や空間と身体を伴ったパフォーマティブな表現活動も行っています。本展でご紹介するのは継続的に制作している花のシリーズから。渡邊にとってささやかな聖域であるキッチンの片隅で撮影された花、そして夏至の花シリーズです。
渡邊が主に好んで撮影する花は、ピークを過ぎて枯れていく過程にある切り花です。とくに一年の中でもっとも生命力が高まる〔であろう〕夏至に撮影します。枯れた花はもう生きてはいないが死んでいるわけではない。夏至という特別な日に、それを逆さまにして撮影することで意味が転倒する。枯れた花にもうひとつの「生」をもたらすことができるのではないか。写真はその揺籃期において「魂を奪われる」として忌み嫌われたこともありました。しかし渡邊は撮影することで逆に再生させられると考えているわけです。生と死を二項対立的にとらえるのではなく、その中間へのしなやかな思考は、彼女のシャーマンライクな側面と理解できます。
花の撮影について渡邊は次のように語ります。
花が花しているのを撮る、
わたしもやっと花せる!花せた!みたいに、
形ではなく内側から経験しているから意図できないことが起こります。
「花」「鼻」は「しょっぱな」にみられるように、古来「先端」というニュアンスから発生したと言われています。そして「話す」「放す」は、いずれも端緒を開くということでもあり、渡邊の言う「花せた」はあながち言葉遊びではないのかもしれません。
生命力に満ち溢れた物質性という文脈で捉えるなら、ジェーン・ベネットの『震える物質~物の政治的エコロジー』を参照することも可能でしょう。しかしここではよりシンプルに、二人の女性アーティストの制作過程にある儀式性に注目し、共に受動的で不活発な物を生きた存在として再確認する作品を、2つの展示室で展開します。