Statement

子どもの頃、今という瞬間はあるのか考えていた時期があり
今遊びという、早口で「今」と言い合う遊びを友達としていたことがある。
今、と言っている瞬間にもう蒸発して無くなってしまうような
するっとそこだけ抜け落ちる、いるのに居ないような捕まえられない不思議な感覚。
その遊びは当時すぐに飽きてしまったけれど時々に思い出す出来事であった。

今回の作品は千という無限の意味にも使われる数字を目標とし
ただ数を重ねる方法として顔のようなものを千枚描き、薄い紙に定着させた。
一枚では薄い紙でも束になると身体に負担がかかるほどの重さになる。
出来上がったものをめくっていくと、はじめは時間が止まる感覚になった。
人混みですれちがう人と目があった時のように。または残像を追うように。
ただひらすらにめくる動作を繰り返していくと
意味のようなものが空気に溶けて浮遊していき、行為だけが残って抜け殻になっていく。
羊を数えて夢に消えていくような一種の念仏装置のようにも感じた。

今行っていることはかつて自分が考えていたその遊びを
もう一度やり直す始まりだと思った。

Biography

1989 神奈川県出身
2012 多摩美術大学卒業
2012 デザイン事務所入社
2016 フリーランスとして活動開始
2018-2019 YOKOHAMA R16スタジオ参加