ALTERNATIVE SPACE The White

Exhibition 展覧会情報

大山 純平「父の名は」

Room #202

大山 純平「父の名は」

2019年09月17日 〜2019年09月28日

13:00〜19:00 日・月曜 休み

Statement

21時10分になると、男と女がしゃべりながら階段を下りてくる。私がまだそのことを知らなかったとき、私は出勤するために21時10分に部屋を出ると、彼らが階段を下りている途中だった。私は彼らの下半身だけ見て、すぐに自分の部屋のドアの方に振りかえり施錠した。その間に彼らは私を通り過ぎていった。私は彼らのすぐ後に続いて次の階段を下りた。男が前を歩き、女が彼の斜め後ろを歩き、私は女の斜め後ろを歩いた。女は男との位置関係を保ったまま歩いていた。階段一段分。男は何度か振りかえって女の足もとをちらちら見ながら歩いた。彼らの歩く速度はとても遅かった。彼らを追い抜けるほど階段の幅に余裕がないので、私は彼らを追い抜かないように彼らよりもさらに遅く歩いた。彼らの頭に照明が当たり、髪の毛の下の頭皮が白く光っているのを私は歩きながらゆっくり見た。彼らが階段を下りて共用玄関の自動ドアが開いたので、私は歩く速度を上げて彼らを追い抜いて職場へ向かった。彼らは終始無言だった。別の日、21時10分になると、彼らがしゃべりながら階段を下りてきた。私はドア越しに彼らが階段を下り、自動ドアが開き、閉まる音を確認してから部屋を出た。彼らは玄関の先の歩道にいた。男は自転車のハンドルを持ちながら女に話しかけていた。女は男のすぐそばに立っていた。私は彼らを見ないように、彼らの話を聞かないように、通り過ぎて職場へ向かった。今日も左足裏の土踏まずが痛かった。別の日、21時10分になると、私は部屋の床掃除をしてから部屋を出た。彼らは自転車置き場にいた。男が自転車の鍵をはずしていた。女は男のすぐそばに立っていた。私は思った。男の顔は何度か見ることができたが、女の顔は見たことがなかった。彼女はいつも後ろ姿だった。とは言え、男の顔も思い出せなかった。

Biography

東京都出身。金村修ワークショップ参加。